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制作者 Pierre Chen
更新日 January 05, 2023

中国の電池グレード炭酸リチウム価格動向
Source: investing.com


川下の需要は緩み、リチウム価格はピーク越えへ

11月を振り返ると、川上では新エネルギー車メーカーが年末に向けて大量の在庫を積み増したため、電池グレード炭酸リチウムのスポット価格は上昇し続けました。この時期、正極材メーカーは12月の生産量を前月比で増やす計画をしており、原材料需要は楽観的にみえました。しかし川下では、翌年1月に新年で需要を減らす自動車メーカーに対応するため、主要電池セルメーカーが12月に生産量を減らし始めており、需給の乖離が生じ始めていました。

12月初頭、市場では予想を上回る新エネルギー車販売とリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)の在庫補充による需要増で、リチウム化合物の供給不足が予想以上に厳しくなりました。しかし、自動車メーカーが翌年1月に新年で需要を減らすことに対応するため、川下の主要電池セルメーカーは12月から既に、生産を減らしていました。電気自動車市場の閑散期が近い一方で、中国の炭酸リチウム生産量は伸び続けたため、リチウム化合物の厳しい供給不足は緩み始め、12月は価格が下がり続けました。12月末の電池グレード炭酸リチウム価格は51.95万人民元/トンまで下がり、前週比3.35%低下し、前月比では10.04%低下。2021年初頭以来続いていた炭酸リチウム価格の高騰トレンドは終わりを迎えました。

足元では、供給側の新規生産量は主に、既存生産能力(brownfield)の拡充によるもので、新規建設(greenfield)による生産の進捗は予想より遅れています。冬になり気温が下がることに伴い、青海地区での塩湖からの抽出によるリチウム生産量は少なくなり、業界では、リチウム塩価格が依然として上昇傾向とみているため、在庫を積み増しています。こうした状況下で、短期的にはリチウム塩供給は不足が続くと見込まれ、炭酸リチウム価格は上昇が限られても、2023年初頭は下支えされ、Q1は高値不安定の情勢と見込まれます。Q1末には川下の需要の緩みが川上にも伝わって、炭酸リチウムの高値が完全に過ぎ去り、下半期は40万-50万人民元/トンのレンジに低下すると見込まれます。2024年については、需給が引き続き緩むため、価格はさらに30万-40万人民元/トンまで低下すると予想されます。このため、リチウム塩の在庫が十分にあり、かつ、リチウム塩をスポット市場で調達する必要のあるメーカーは、短期的な電池セル生産コスト低減のため、状況をみて調達時期を先送りするべきでしょう。
 
リチウムの価格変動が電池価格に及ぼす影響*三元系リチウムイオン電池はNCM811で測定
 

リチウム化合物市場の構造、長期的には供給網の現地化が主導へ

短期的な戦略物資に対する考えと長期的なリサイクル展開により、サプライチェーンが現地化するという流れができ、リチウム化合物の価格とコスト構造は今後、この影響を大きく受けます。足元では、主要自動車メーカーが既に、補助の要件に対応するため、協力パートナーと現地で重要鉱物の精錬とリサイクルを行う計画に着手。長期的なリチウム塩の需給構造は、現地化の程度によって決まると見込まれます。将来的にリチウム価格は、政策の要素が主導して、エリアごとに異なり、リチウム化合物の価格は単純に市場全体の需給によって決まるものではなくなるでしょう。現地化における協力と競争も今後、電池サプライチェーン企業の中、米、欧という三大市場での力比べのカギになります。

中国は現在、リチウムイオン電池サプライチェーンにおいて中心的な位置にいます。InfoLinkが先に「米国インフレ抑制法が世界の電池セルサプライチェーンに与える影響」で分析した通り、リチウムイオン電池供給網では、原材料の精錬加工、電池セルから電池モジュール製造まで全てが、高い割合で中国に集中しています。しかし、エネルギー危機により、西側諸国は、エネルギー安全保障と戦略資源の自主開発に主眼を移しました。リチウムイオン電池の材料供給は既に、西側政府の産業政策において焦点になっています。

世界では現在、リチウム精錬生産能力の70%以上が中国に集中しています。スケールメリットと産業経験を補うため、欧米諸国の政府は大規模な補助と管理政策を打ち出す必要があります。産業を保護する傘のような制度を構築し、設備投資の負担を低減して、企業の投資を呼び込み、中国以外の電池原材料サプライチェーンを発展させる必要があります。米国インフレ抑制法が掲げるように、電気自動車産業を刺激すると同時に、鉱業企業や材料精錬企業への高額補助を通して産地規制を実施し、困難な電池サプライチェーンの切り離しという任務を進めるのです。

ニッケル、コバルト資源に比べて、リチウムは地理的な集中度が比較的低いため、鉱物資源の取得は主な難題ではありません。現地政府が十分に魅力的な条件を提供し、化学工業企業の精錬業務参入を呼び込むことができれば、リチウムサプライチェーンの現地化は比較的容易に実現できると私たちはみています。

世界のリチウム供給と需要予測
Source: InfoLink 2023 Q1 世界の電池セルサプライチェーンと発展動向リポート

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