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制作者 Corrine Lin
更新日 December 09, 2022

先ごろ閉幕した国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)では依然として、気温上昇を1.5度以内にするためにとるべき行動と温暖化対策のための資金援助が主要テーマでした。気候変動への対応がもたらす産業変革が、新たな流れである炭素資産配置と巨額の投資とともに訪れ、再生可能エネルギーの旺盛な需要により、太陽電池サプライチェーンが引き続き大規模な生産能力拡充を進めるでしょう。こうした中、太陽電池関連の各種大型展示会では既に、カーボンフットプリントをアピールするモジュールが相次ぎ出展されています。しかし、実際には多くの企業が大幅な増産の過程で、低炭素変革についての検討や関連措置をまだ行っていません。

需要面では、ウクライナ戦争により従来型エネルギー価格が高騰し、欧州連合(EU)が再生可能エネルギー展開を加速。太陽電池需要におけるEUの比率が高まっています。同時に、EU域内では炭素排出基準が厳しさを増しており、2023年から炭素国境調整メカニズム(CBAM)の移行期間となり、2027年から正式に導入されます。CBAMは当初、炭素排出量の多い産業に重点が置かれますが、後には産業の炭素排出量に応じて適用範囲が広がると予想されます。太陽電池産業は消費電力が高く、適用対象になると見込まれ、現在既に、多くのエリアで関連規定が打ち出されています。例えば、フランスでは公共入札案件で太陽電池モジュールの炭素排出量に規定を設けており、カーボンフットプリントの限度は750kg-CO2/kWで、証明が必要。これを満たしていないと、公共調達入札に参加できません。このほか、フランスのエネルギー規制委員会(CRE)は、100-500kWの屋根設置型太陽光発電装置に関する税制を設定。カーボンフットプリントの低いモジュールの使用を求めており、太陽光発電プロジェクト入札CRE4ではカーボンフットプリントの基準を550kg-CO2/kW以下としています。また、韓国では政府が炭素認証制度を実施しています。太陽電池モジュールの炭素排出量を3等級に分類し、炭素排出量の低いモジュールが優先的に補助を得られ、入札でも高い評価となります。アジア市場でも今後、こうしたニーズが高まると見込まれます。

全体として、世界の太陽電池需要におけるEUの占める割合が高いことが、CBAM実施による影響を大きくし、太陽電池メーカーは、炭素税によりメーカーの優位性が見直されることに注意を払う必要があります。今後の課題は、多大な既存の生産能力と引き続き行う設備投資を如何にして低炭素の流れに結び付け、低炭素競争で先行するかということです。

世界の太陽電池需要構成比


太陽電池サプライチェーン、炭素削減への道筋

太陽電池モジュールを炭素排出の面からみると、測定条件や製品基準によって、実際の数値が大きく異なる可能性があるものの、現時点ではシリコンの排出量がモジュールの中で最も多く、半分近くの比重を占めています。次いで排出量の多いのが、同じく消費電力の大きいインゴット製造過程。このほか、ガラスやEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)といったモジュールの補助材料が排出量の多いものとなっています。

太陽電池モジュールの炭素排出量構成比

このため、太陽電池モジュールの炭素排出量を低減するには、現時点では主に二つの方法があります。まず一つ目は、使用する材料の改善です。現在公開されているデータでは、粒状シリコンの方が棒状シリコンよりも炭素排出量が少なく、メーカーは粒状シリコンの比率を高めることで炭素排出量を削減することが可能です。また、各種材料の使用量を低減することでも炭素排出を直接削減できます。今年、シリコン価格高騰により生じた予想以上のウエハー薄型化も、炭素削減の補助的な効果をもたらしました。二つ目は、積極的な効率向上です。モジュールの単位面積当たりの公称出力を高め、同じ材料を使用した場合でも高いワット数を出力することで、全体的な炭素排出量を抑えることができます。


太陽電池製造のネットゼロ変革における課題と行動

協力メーカーが認証した材料でみてみると、現段階の低炭素モジュールは基本的にkW当たりの炭素排出量が450kg以下になっており、少ないながらも同400kgより低いものもあります。しかし、現在の太陽電池業界の課題は、多大な生産能力がもたらす激しい価格競争の中で、メーカーの多くが、低コストと高いコストパフォーマンスで大量生産できる主流のPERC技術と、次世代の主流と見込まれるTOPCon技術を選ぶことで、より高い競争力を示せることにあります。製造地域の面では、まず中国の主な太陽電池クラスターが選ばれ、これに続くのが東南アジア。これら地域で製造することで、最もコスト低減効果が得られます。

上記した現状による課題から、メーカーが実際に着手できる炭素削減の手順は次の三つです。
 

一、カーボンフットプリント検証の実施

各国が相次いで炭素市場や炭素税といった制度を打ち出している中、その対象になる産業は増えていくと見込まれ、炭素費用や炭素税は、必ずやメーカーが拠出するべき環境コストになるでしょう。メーカーは、今後の炭素削減行動の計画を立てるため、まずはカーボンフットプリント検証を実施し、足元の排出状況を把握し、それに派生する炭素コストを見積もるべきです。
 

二、技術ロードマップの対応と生産能力の更新

上述のカーボンフットプリント検証により、業界での激しい競争においても着手できる炭素削減行動を見つけ出すことができます。材料面では、ウエハー薄型化の急速な進展で、足元のシリコン使用量は1ワット当たり2.45グラム前後になっています。シリコン使用量が少なければ少ないほど、炭素排出は低く抑えられます。しかし、薄型化が今年、急速に進んだことに加えて、2023年のシリコン価格は低下傾向が見込まれ、今後、PERCやTOPCon技術による1ワット当たりのシリコン使用量の低下余地は既に限られます。このため、さらに薄型化が可能なHJTが今後、低炭素市場で強みを示すと期待されます。低炭素市場に向き合うメーカーは、HJTの技術ロードマップ展開とコスト低減をおろそかにできません。

上述した研究開発における薄型化や今後の技術ロードマップの設定、補助材料の使用量や調達先の見直し、さらには今後の生産能力更新時。こうした際に、炭素排出量を勘案するにはいずれも、カーボンフットプリント検証の結果をもとにして、サプライチェーン変更の優先順位を決めることができます。

電池セルの炭素排出量比較
電池セルの炭素排出量比較
 
三、生産エリアの配置

異なる国で製造した際に炭素排出量に大きな差が出るだけでなく、同一国内でも地域ごとに電力源の違いで大きな差が生じます。このため、メーカーは新たな増産を進めるに当たっては、今後の炭素削減を見据えて工場設置地域を選定するべきです。主なシリコン生産エリアを例に見てみます。以下のAからFの6社はそれぞれ、内モンゴル、江蘇、青海、陝西、四川、新疆にある企業で、多結晶シリコン1キログラム当たりの消費電力で測定した炭素排出を表示しています。これによると、消費電力が大きくても、炭素排出量は競合より低いという状況が生じています。これは、メーカーが工場を設置したエリアが比較的クリーンなエネルギー源を使用していれば、全体的な炭素排出係数で強みを持てるということを示しています。 
 

多結晶シリコン1kg当たりの炭素排出量と電力使用量(メーカーと地域による違い)


多結晶シリコン1kg当たりの炭素排出量と電力使用量

低炭素の流れは太陽電池メーカーにとっての新たな潜在的リスクですが、製品が類似化する中においては魅力を高める新たなチャンスでもあります。高いシェアを占めるトップ企業は特に、気候変動に対する守りの姿勢から積極的なネットゼロ戦略採用で攻めに転じ、コスト節減利益向上と炭素排出のバランスを意識する必要があります。

こうした環境において、企業は政策面から各国の炭素関連制度の進展を理解し、特定の市場に焦点を定めて商機をつかむべきでしょう。現時点では低炭素製品はシェアが低いものの、大きな値上がり余地があります。このため、企業は戦略として、まず材料や技術の見直し、さらには既存生産能力の更新を計画するべきです。低炭素製品の戦略計画は、企業の今後数十年にわたる基礎的な競争力を試すものになるでしょう。


 

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