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制作者 Sam Lin
更新日 March 30, 2023

リポート「為何在歐洲與美國都出現離岸風場投資退卻的現象?(なぜ欧州と米国で洋上風力発電投資からの撤退が起こったか?)」でInfoLinkは、洋上風力発電ひいては多くの再生可能エネルギー案件でプロジェクトファイナンスを採用する場合、資金の約七割が債券によるものだと言及しました。リスク・フリー・レートの上昇に伴い、風力発電所は高い金利費用を受け入れることになります。以下の文章では、低金利環境が再生可能エネルギー開発に有利である理由と、高金利下で風力発電所のファイナンシングが直面するであろう課題を徹底解剖します。
 

過去の低金利環境で資金はいかにして洋上風力発電へ流入したか

2008年のリーマン・ショック以降、世界で低金利環境が14年もの長きにわたって続きました。アメリカ・フェデラル・ファンド金利は新型コロナウイルス禍が発生する前の2018年まで2%をわずかに超える程度で、欧州中央銀行のリファイナンス金利は0%を維持していました。低金利下では銀行の貸出業務の利益が圧迫され、安定した利子収入源だった国債や高格付け社債による利子収入が減少。銀行は新たな借り手を探す必要に迫られ、再生可能エネルギー案件が理にかなった収益をもたらす低リスクの選択とみられていました。当時、洋上風力発電は建設の難易度が高いものの、成熟しつつありました。風力エネルギー業界団体WindEuropeの統計では、洋上風力発電の借り入れコストとロンドン銀行間取引金利(LIBOR)間の金利差は、2011年の325ベーシスポイントから、2019年には150ベーシスポイントまで低下。市場が洋上風力発電のリスクが低下してきているとみていることが明らかでした。

一方で、年金基金や政府系ファンド、保険会社といった機関投資家はそれまで、通常は持続的にキャッシュフローを生み出せる公共事業や輸送システムに注力していました。しかし、機関投資家もまた、あふれる資金を背景に投資先が乏しくなり、投資利益率が以前ほどではなくなるという問題に直面。このため、通常とは異なる資産に目を向け始めました。このうち、洋上風力発電は固定キャッシュフロー(僅差決済取引とCPIを連動したものもあり、インフレリスクがより低い)をもたらすことができ、必要な資金が百億台湾ドル以上であることや、投資利益率が通常の投資先であるインフラの二倍にもなることで、多くの機関投資家が投資しました。例えば、世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金(Government Pension Fund of Norway)は2021年、洋上風力発電開発などを行う、デンマークのオーステッドから洋上風力発電所Borssele 1 & 2の権益50%を取得し、2022年の利益率は5.1%でした。


 再生可能エネルギー案件は負債比率が高い


総じて言うと、低金利環境は再生可能エネルギー開発に有利に働きます。再生可能エネルギー案件は負債比率が高いということと、設備投資が大型で事業運営費が小さいという特徴があるためです。負債比率が高いと、レバレッジをきかせて全体的な資本コスト(WACC)を低減できます。また、再生可能エネルギーはESG投資というトレンドに合致し、投資利益も従来型のインフラ投資先より良好です。設備投資が大型で事業運営費が小さいことで、再生可能エネルギーは発電において従来型エネルギーに比べて、低金利時により高い利益が得られます。従来型エネルギーの発電コストでは、燃料購入の占める割合が再生可能エネルギーより高く、金利が低ければ低いほど割引率も小さくなり、従来型エネルギーの魅力が低下します。以上の二つの特徴から、再生可能エネルギーのキロワット時当たりのコストは、化石エネルギーと比べて金利に対してセンシティブです。つまり、再生可能エネルギーの金利弾力性は従来型エネルギーより高く、このため、低金利環境は再生可能エネルギー開発により適しています。
 

高金利による洋上風力発電への影響:資本コスト上昇、不確実性増加

インフレが続いていることで、各国政府は金利引き上げによるインフレ緩和を余儀なくされています。しかし、これは同時に、再生可能エネルギーのファイナンシングに影響を及ぼします。

まず、債券、株主資本いずれによる資金調達でも、コストが上昇します。図から分かるように、2018-2019年に欧州中央銀行の主要リファイナンスオペ(MRO)が0%を維持していた時期、WindEuropeのデータによると、多くの国の陸上風力発電の負債コスト(Cost of Debt)はいずれも4%以下。リスクが比較的低いドイツでは0.8%まで下がることもありました。また、株主資本コスト(Cost of Equity)はおよそ4%-13%、ドイツでは2.8%。一方、洋上風力発電のCoDは最高がラトビアの5.0%で、最低はイギリスの1.2%。洋上風力発電のCoEの最高はラトビアの21.0%、最低はオランダの5.5%でした。
 

欧州陸上風力発電所2018-2019年の株主資本コスト(Cost of Equity)
欧州陸上風力発電所2018-2019年の負債コスト(Cost of Debt)
欧州洋上風力発電所2018-2019年の株主資本コスト(Cost of Equity)
欧州洋上風力発電所2018-2019年の負債コスト(Cost of Debt)

足元では、アメリカ連邦準備制度(FED)のターミナルレートが5%以上になる可能性が高いと思われます。各国の中央銀行は資金流出を防ぐため、アメリカとの金利差を縮めることに力を尽くすことになり、CoDとCoEもこれに伴って上昇することは疑いなく、再生可能エネルギーの金利弾力性がここにきてかえってデメリットに。キロワット時当たりのコスト(LCOE)の上昇割合が従来型エネルギーより高くなり、高金利が資金供給の減少を招きます。この結果、資金調達コストの上昇幅が金利上昇幅より大きくなる可能性があります。

高金利は洋上風力発電開発、ひいてはエネルギー・トランジションのペースを遅らせる可能性があります。高金利は投資家と貸出者が熟知した領域やエリアで良好な利益率を得られることを意味し、リスクが高いエリアや洋上風力発電の新興市場では、資金調達がより難しくなります。開発途上国の風力発電所では、求められる投資利益率の上昇幅が先進国より高くなる可能性があります。これは、もともと経済の弱いエリアで進める資本集約型の洋上風力発電投資に不利に働きます。加えて、高金利下では固定価格買い取りや補助政策によるコストもさらに高まり、財政政策も抑えられるでしょう。

次に、利上げの過程で生じる不確実性が、機関投資家の参入意欲に影響を及ぼすことが挙げられます。機関投資家、特に年金基金と保険会社はリスクを非常に嫌います。足元では、各国中央銀行の利上げペースは、見え隠れする銀行のシステミック・リスクの影響で、利上げの道筋に不確実性が増しています。再生可能エネルギーは金利弾力性が比較的高く、金利変動に敏感という特徴があるために、利上げ過程で受ける不確実性がより大きくなります。このため、リスクを避ける機関投資家の撤退につながり、洋上風力発電事業に流入する資金を減らして、バランスシートやエクイティ・ファイナンスによる資金調達が可能なデベロッパーの強みが拡大します。

洋上風力発電、ひいては再生可能エネルギー業界全体が高金利環境に直面するのは初めてです。資金の供給過剰状態が逆転したことで、資金調達コストが上昇しますが、気候経済学者の多くは、高金利によるエネルギー・トランジションへの影響を比較的楽観しています。ロイターの調査によると、回答者68人のうち四分の三が、影響は軽微とみています。それによると、高い借り入れコストは一時的なものだという意見が中心。足元では多くの国のインフレ率が指標金利より高いため、実質金利がマイナスとなっており、再生可能エネルギーが化石エネルギーより非常に高いというわけではないと指摘されています。

再生可能エネルギーの資金調達チャネル確保ため、政府は再生可能エネルギー向けの優遇金利提供を検討し、また、企業のエネルギー・トランジション促進のため、炭素市場の整備を加速するべきです。さらに、PPA(電力購入契約)市場の需要と流動性を高め、機関投資家の疑念を低減する必要もあります。多くのデベロッパーがインフレと利上げ圧力が緩和するまで開発を見合わせ、調達や電力供給に関する取り決めの再交渉を行っています。デベロッパーからサプライチェーンに至るまでが、コスト上昇の圧力を受けています。再生可能エネルギーのキロワット時当たりコストは年々低下していくだけ、という予想は修正が必要かもしれません。

出典:
Rising interest rates only a mild snag in climate battle (https://www.reuters.com/business/environment/rising-interest-rates-only-mild-snag-climate-battle-2022-09-28/ )
Supporting the Energy Transition: the Role of Low Interest Rates | France Stratégie (strategie.gouv.fr)

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